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修理工場



修理工場の見学が始まるというので、プラットフォームの端に行くと、夫婦1組と40過ぎの男性が既に待っていたが、それだけ、
我々を含めても総勢5人。
老年のガイドが来て、まず工場の横に留めてある古い客車の解説から始めた。
鉄道勤務はした事ないが、好きでヴォランティアとして来ているとの事。

修理工場は大きな建物ではなく、日本で言えば、昔の中規模機関区の検修庫程度であろうか。
線路側からではなく建物の真ん中程にある入口を入ると、奥行きは機関車の巾6台分位。
横は大きな機関車2台分、場内引込線にはディーゼル機1両が入口寄りに、その前に蒸機の93号。
このディーゼル機が軸焼けを起こした「93」を場内に押し込んだのだろう。

手前側、窓のある壁の前に並んでいる作業台の上には工具が所狭しと置かれている。
通路を挟んで機関車側には大きな旋盤、又、通路があり、その次は動軸ベアリング、軸箱、蒸機パイプ類や特大の万力、
溶接用の顔マスク等の工具が入り乱れている大きな作業台。
その向こう 3m程の作業スペースの後に「93」。

急な階段を数段下りると工場の床、とにかく凄まじい程の部品、工具が置かれている。
「93は昨日の運行で軸受けを焼き付けて帰ってきた。 第1動輪が外してあるだろう」
良く見ると確かに動輪は外されており、運転室の横に無造作に車体に対して直角に置いてある。
第3動輪の前には溶接用のボンベ2本が手押し車に乗っていた。
ロッドは全て外されており、引込線入口の反対壁側の床の上にでも置いてあるのだろうが、物が多すぎて見えないし、
こちらの通路の横からは一般立ち入り禁止。

床の後の壁側には隅から隅迄、工作機械がびっしりと並んでいる。 機械は古いものばかり。
「当時の工作機械でなければならない物が沢山あるんだ。 もう手に入らない物もあるし。
工具も昔からのを使っている。なんせ特殊サイズだからね。 買い替えが出来ない。 場合によっては此処で工具も作る」
特大レンチ等が並んでいる棚も見せてくれたが確かに大きい。
日本の機関区でも検修用のは見てはいるが、改めて各々の工具の大きさに驚かされた。
工具は昔からの物が磨耗した場合には自作との事。

「 9 3は2日程で修理出来る。パーツもあるし。無ければ作るか外注だ。 ベアリングの所も直せる。 全て此処でやるんだ」
驚いた事には、タイヤの研磨はおろか、動輪タイヤの交換迄この小さな工場で行っているとの事。
タイヤの交換焼き嵌めが出来るのは、これも観光用に蒸気機関車定期運転を行っているストラスバーグ鉄道だけで、
全米の殆どの動態蒸機の動輪タイヤ交換はそこで行われている、
と私は記憶していたが、生半可な知識は見事に打ち砕かれ、改めてアメリカのヴォランティア層の厚みと熱意を感じた。
工科大学からの研修もあるようで、歴史の浅いアメリカの歴史を残してく、という一般的に広まっている意気込みを感じた。
因みにタイヤ交換は、タイヤにオイルを塗り、熱でやられない様に動輪スポークに水を浸したボロギレを巻いた状態でオイルに点火、
タイヤが膨張した所で外すとの事。嵌める時はこの逆だが、軸に対して対し直角に装着するのには経験が物を言うのだろうか。

                 

                
        写真の中央は動輪軸箱。その左、茶色の筒を半分に割った様な形をした物がニードル・ベアリングを保持し、軸箱の上に乗る。

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